なぜ、組合が男女平等に率先して取り組むのか

2014年6月3日
なぜ、組合が男女平等に率先して取り組むのか
なぜ、組合が男女平等に率先して取り組むのか
■なぜ、組合が男女平等に
率先して取り組むのか


ダイバーシティ、ワーク・ライフ・バランスの観点から



私自身、共働きの妻とともに子ども2人(7歳と4歳児)を育てており、育児休業も2回取得した。妻は部長職でバリバリ頑張っているため、2人で一緒に家事育児をしないと家庭が成り立たない状況である。また、4年前から父親が要介護となっているため、基本的に夕方、仕事が終わると息子たち2人を保育園と学童に迎えに行き、父親のところに行くという生活を送っている。本稿では、今後は男性女性双方にとってワーク・ライフ・バランスは不可欠になっていくこと、働きがいのある職場風土を醸成するうえで組合が果たす役割が重要であることを述べる。

 

 

 

なぜ、ダイバーシティや
WLBに取り組むべきなのか?

 

 人口減社会は総力戦である。これからはあらゆる職場で人の奪い合いになっていく。

24時間365日働ける日本人、男性、健常者しか揃えないとなると、どんどん優秀な人が採れなくなる。そんな人口減社会でのキーワードは、一人3役。市民の3面性=職業人、家庭人、地域人である。ちなみに組織にも経済性、人間性、公共性という3面性があり、それぞれ、職業人と経済性、家庭人と人間性、地域人と公共性というパラレルの関係にある。

 ダイバーシティ(多様性)には、『属性の多様性』という外なるダイバーシティと『個人の多面性』という内なるダイバーシティがある。『属性の多様性』には①性別、②年齢別、③国籍別、④雇用形態別、⑤障害の有無などの5本柱がある。誰もが働きがいがある職場=ダイバーシティとなり、いつでもどこでも=ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和、以下WLB) となる。個人の多面性は家庭と仕事の二者択一ではなく、ワークとライフの相乗効果が一番重要である。

 2030年頃に要介護人口がピークに達すると、私の試算では少なくとも平均して社内の3人に1人が介護をしながら働くことになる。加えて、子育てに携わる人などもいるため、今のように多くの人が時間制約なしで働ける社会ではなくなる。

 その時、WLBに力を入れていない職場では、介護のために辞める優秀層が増えてしまうだろう。なぜなら、私がヒアリングしてきた経験からいうと、彼らの多くは「親孝行したい」という気持ちが人一倍強い。また、彼らは辞めて実家に帰っても転職できると比較的楽観視する傾向にある。WLBに配慮して、彼らを引き留められるかどうかが、今後は組織を支える人材の確保につながる。

 これらの変化はじわりじわりと進行するため、短期的には気が付きにくい。しかし、労働組合が主導し、組織は今から一気に改革していくべきだ。1、2年では目に見える成果は出ないかもしれないが、10年後、20年後、WLBの状況が人材の確保にとどまらず、職員の就労意欲にも歴然とした差として表れてくるはずだ。リスクに気付いた時にはもう遅い。
          


 

大きな分岐点に立つ日本

 

 今の日本は40年前の日本に非常によく似ている。当時日本は環境後進国で公害問題が頻発した。その日本を変えたのはオイルショックである。エネルギーを制約し環境に負荷をかけないためのイノベーションにより生み出された技術は、今では日本産業の付加価値となっている。経営効果が見えにくいと言われるWLBは、持続可能性という意味で環境問題と非常によく似ている。今の日本のWLBは明らかに発展途上国レベルである。しかし、東日本大震災によるエネルギーの制約からWLBはマストとなり、エネルギー効率を高めるという指標はWLBの必要性を明確にした。40年前、オイルショックにより変わった日本は、今また、東日本大震災により大きく変わろうとしている分岐点に立っている。

 

職場風土を改善するには

 

 WLB推進で重要になってくるのは男性社員の意識改革とよく言われる。これからの人口減社会では経営陣がWLBの必要性を認識していても、なかなか現場に浸透していかない。これは組織のピラミッドの中間層にその浸透を阻む粘土層があるからである。粘土層への対策が今一番重要である。

 粘土層には『カミ粘土』と『カタ粘土』の2つがある。今の経営層の多くが若いときのワークライフは超アンバランスであった(そうでなければ出世ができない)が、彼らは今もその価値観かというとそうではない場合がある。例えば愛娘がワーキングマザーで苦労をしている状況では、実は良き理解者になっていることがある。こういう層はプライベートな部分で理解がある「水」で溶ける『カミ粘土』である。『カタ粘土』とは、ガチガチに固着している層である。そういう層は、WLBというと自分の生き方が否定されていると感じ反撥するが、その中でも本当に優秀な人は、データとロジック(相手に響く言葉)を使うとある程度説得ができるだろう。

 最近、今、一番経営陣から反応があることは、なぜダイバーシティをやらなくてはいけないかをコンプライアンスの観点から見ることである。
 海外のダイバーシティの研究で、女性役員が1人以上いる企業は、社員の能力の範囲が拡大され、ガバナンスが強化される等により経営破綻確率が2割減るというデータがある。男性ばかりの役員だと、ハイリターンでハイリスクを選択する傾向が強いが、女性が入ると少し視点が堅実になってくるためである。日本でも同じ調査を試みると、現在の日本では女性役員比率が低すぎるため(1%程度)統計的に有意な調査にならないが、女性管理職割合で見ると、女性管理職割合が低い企業ほど、そして長時間労働の職場ほど、不祥事が生じるリスクが高い(渥美由喜の調査)。これは、経営には不可欠である『チェック機能』が働かなくなるためである。女性は組織防衛よりも社会防衛の観点から異論を言うことができるし、WLBによってもたらされた多面性で抑止力が働く。長時間労働は不祥事の温床であるという観点からも、WLBは進めていかなくてはならない。

 

女性の活躍は、
男性上司にもプラス

 

 最近は女性部下を登用できなければ評価を下げる企業もある。評価基準に入れることは、最も会社員を動かす。十数社で男性上司の女性部下登用と出世の関係を見ると、女性部下を抜擢した男性上司が役員になる確率は、抜擢しなかった場合と比較して平均で5~6倍、高いところでは10倍になるということが分かった。その理由は2つ考えられる。1つ目は男女にかかわらず、フェアな目線で評価するということ。2つ目は、男女にかかわらず、あらゆる部下に対してサポートや励ますことができるということである。女性の登用は男性にとっては自分たちの椅子が奪われるというイメージがあるが、実は自分たちにとっても得があるのだということは、男性管理職研修で非常に響く部分である。

 景気が悪かった過去5年、4000社の財務分析をしたところ、一般企業は3割経常損益を落としたが、女性活躍やダイバーシティに取り組んでいる企業は1割伸ばしている。

 

業務の効率化を進めるには

 

 業務の効率化は、『時期の平準化』と『人の平準化』の2つで達成できる。『時期の平準化』は、繁忙期と閑散期をならすことで達成できる。繁忙期が標準になってしまうと本当は定時に帰れる閑散期も自分で不必要な仕事を作ってしまう。時間外を減らすには、まず繁忙期を減らすことである。繁忙期を減らすには、先んじてやるか後回しにするかである。『人の平準化』は、スキルマップを整理しそれに基づいて新しい担当者を配置し、業務が集中している担当者から別の人に業務を振り分けることにより実現する。チーム内でお互

いに仕事をカバーする動機づけにもする。こうすることで全体的に業績は上がっていく。WLBとは、単にみんなで早く帰り、休みを取るという単純なものではない。

 

おわりに

 

 WLBやダイバーシティは、日本を活性化するための経営戦略、地域戦略として不可欠であり特効薬であるが、残念ながら即効薬ではない。すぐに大きく業績が上がり、地域が活性化するのであれば、すべての地域、企業が取り組むが、じわじわと効き、いつしか健全で強靭な企業体質、持続性の高い地域になるというような漢方薬のようなものである。そのため、近視眼的に目先の業績向上に目を奪われていると後回しになりやすい。しかし、そういう自治体や地域に明日はない。それに気が付けるかどうか、日本企業は今、大きな分岐点に立っている。ぜひ皆様の自治体、地域で、このWLB、ダイバーシティを活かし、さらにより良い職場、地域にしてほしい。

 

 

 

 

 

 (自治労通信2014年5・6月号より)

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